「誰か」//宮部みゆき

誰か ----Somebody

誰か最近ファンタジーがメインとなっていた宮部氏の久々の社会派ミステリー。
主人公は大企業の会長をつとめる男の娘婿。
結婚の条件として社の広報部に転籍した彼は、社内や親戚などから「逆玉」と揶揄されているが、実はごく普通の恋愛結婚をしたごく普通の家庭を営んでいる。
だが舅の私設運転手が自転車の接触事故で亡くなったことから、彼の周りはゆっくりと動き始める。
運転手の二人の娘たちは接触した自転車の持ち主が見つからないことに憤りを感じ、父親の生い立ちと死の真実を調査し、手記を発表することで犯人が出頭するのではないかと考え、懇意にしていた会長を通じて主人公に協力を依頼する。
だが、調べ進むにつれて明らかになっていく真実は皮肉にも・・・

新年一冊目に読み終わったのがこの本。
一応宮部さんの本は出たら読むということにしているんですが
最近のファンタジー物はあまり好みではなくてしばらく離れていた作家さんでもあります。
(なぜ好みじゃないかは、今回はおいといて)

なので久々のミステリーと結構期待して読み始めたのですが
正直パンチが足りないなぁという思いのまま最後まで読んだという感じ。
結構評価は高いみたいなんですが、私は今までの作品の中ではかなり下の方になってしまいました。

読みやすさとか、ストーリーの運び方とかはいつも通りさすがだなと思うんですが
今回のテーマとか、謎解きのきっかけとかがピンとこなかったというのが自分分析の結果。
「あ、ここではっとするんだろうな」みたいに思いながら謎解きの過程を冷めた目線で読んでいる自分がいて
ちょっと二時間サスペンスを見ているのと似ていて悲しかったです。

宮部さんのこういった社会問題を題材にしたミステリは
誰かの死や失踪なんかをきっかけにその問題が浮き彫りにされて
課題提起をして終わるというイメージなんですが
今回は暴走自転車のことも、少年犯罪にしても付録程度で
メインは二人の娘たちの「人を呪わば穴二つ」「隣の芝は青い」的な設定だったように思います。
それが二時間サスペンスっぽい・・・。

特に携帯の着メロで婚約者の浮気相手がわかるっていうのはなぁ・・・
世代の観念のせいもあると思うけどその時点で大体のからくりがわかってしまって興醒めしてしまいました。
しかも今の20代が「恋に落ちて」はどうだろう。

タイトルや巻頭の引用から想像して今回のテーマを勝手にまとめると
「人はなぜ自分の持てる幸福を喜ばず、持てなかった不幸せばかりを嘆くのか」

そういう意味では似たようなテーマが混在していた「トキオ」(東野圭吾)の方が前向きで好きかも。